
新しく営業所を立ち上げる際、事務所や休憩スペースとしてユニットハウスの設置を検討する方は少なくありません。工場で製造したものを現地に搬入するユニットハウスは、工期を短縮しやすく、コストを抑えやすい点が魅力です。
ただし、ユニットハウスは「置くだけ」で必ず自由に使えるわけではなく、建築基準法上の扱いによっては建築確認申請が必要です。申請を怠ると是正命令や罰則の対象になり、営業所の運営に支障が出るおそれもあります。
ユニットハウスであっても、事務所や休憩スペースとして継続的に使用し、電気や給排水を引き込む場合は、建築基準法上の「建築物」と判断されるのが一般的です。国土交通省も「随時かつ任意に移動できないコンテナは建築物に該当する」と示しています。
「工場製だから」「簡易な構造だから」といった理由だけで、建築確認が不要になるわけではありません。これは中古・新品を問わず考え方は同じで、設置方法や用途によっては同様に申請が必要です。
出典:国土交通省「コンテナを利用した建築物の取扱いについて」(https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/build/jutakukentiku_house_tk_000058.html)
建築確認申請とは、建物を建てる前に、その計画が建築基準法や関連法令に適合しているかを行政や指定確認検査機関に確認してもらう手続きです。
車でいえば、走り出す前に安全性を点検するようなものです。建築確認は単なる形式的な手続きではなく、建物の安全性や適法性を事前に確かめるための重要な仕組みといえるでしょう。
出典:e-Gov法令検索「建築基準法 第6条・第6条の2」(https://laws.e-gov.go.jp/law/325AC0000000201)
「基礎がないから建築物ではない」とは限りません。建築基準法上の「建築物」では、人が立ち入らないごく小型の物置などは該当しないとされていますが、事務所や休憩スペースとして人が出入りするユニットハウスは、ほとんどの場合この例には当てはまらないためです。
とくに、特定行政庁によって細かな判断基準が異なる場合もあるため、判断に迷ったときは、事前に設置予定地の自治体窓口や専門業者に確認することをおすすめします。
建築確認を行わずに設置を進めると、行政から是正命令を受け、撤去を求められることがあります。営業所として稼働したあとに撤去となれば、業務に大きな支障が出かねません。
また、建築基準法第99条では、建築確認申請を行わずに工事を進めた場合、1年以下の拘禁刑もしくは100万円以下の罰金が科せられることも定められています。こうした無許可の建築物は融資や売却の面でも不利になりやすいため、事前確認が重要です。
出典:e-Gov法令検索「建築基準法 第99条」(https://laws.e-gov.go.jp/law/325AC0000000201)
ここまで見てきたとおり、ユニットハウスの設置には原則として建築確認申請が必要です。ただし、一定の条件に該当する場合に限り、例外的に申請が不要となるケースもあります。
建築確認申請が不要となる条件は、主に次の4つです。
・都市計画区域外で設置していること
・防火地域・準防火地域の外に設置していること
・既存建築物のある敷地内で、合計10㎡以下の増築・改築・移転として設置すること
・一部の仮設建築物であること
都市計画法にもとづく規制の対象外となる「都市計画区域外」では、建築確認に関する規制が緩和される場合があります。
ただし、2025年4月の建築基準法改正によって4号特例の対象が縮小されており、都市計画区域外であっても、建物の階数や規模によっては確認申請が必要になる可能性があります。
古い情報のなかには「区域外なら申請は不要」と断定的に書かれているものもあります。しかし、法改正前の情報を鵜呑みにすると判断を誤りかねません。設置予定地が都市計画区域内か区域外かは、自治体の都市計画課などで確認できます。
出典:国土交通省「建築確認・検査の対象となる建築物の規模等の見直し」(https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/build/r4kaisei_kijunhou0001.html)
出典:e-Gov法令検索「建築基準法 第6条第1項第3号」(https://laws.e-gov.go.jp/law/325AC0000000201)
防火地域・準防火地域は、都市計画区域のなかでも、とくに建物が密集しているエリアに指定されていることが多く、都市部ではほぼ全域が該当する場合もあります。これらの地域内にユニットハウスを設置する場合は、建築確認申請が必要になります。
設置を検討している土地がどちらの地域に指定されているかは、自治体の窓口やホームページで事前に調べておきましょう。
出典:e-Gov法令検索「建築基準法 第61・62条」(https://laws.e-gov.go.jp/law/325AC0000000201)
床面積が10㎡以下であれば建築確認は不要と思われがちですが、実際には条件があります。
まず、床面積は1棟ごとではなく、設置するユニットハウスの合計面積で判断されます。たとえば、5㎡のユニットハウスを2棟設置する場合は、合計10㎡として扱われるため注意が必要です。
また、10㎡以下の例外が認められるのは、既存建築物のある敷地内で行う増築・改築・移転に限られます。更地に新たに設置する場合は、床面積が10㎡以下であっても新築扱いとなり、建築確認申請が必要になるのが一般的です。
面積だけで「10㎡以下だから申請不要」と判断せず、設置場所に既存建築物があるかどうかも含めて確認することが大切です。判断に迷う場合は、事前に自治体や専門業者へ相談しておくと安心でしょう。
出典:e-Gov法令検索「建築基準法 第6条第2項」(https://laws.e-gov.go.jp/law/325AC0000000201)
工事現場に設ける現場事務所など、工事期間中に限って使用する一定の仮設建築物は、確認申請が不要となる場合があります。一方、イベント施設などは仮設許可や確認申請が必要になることがあるため、個別に確認が必要です。
ただし、これは期間限定で使用することを前提とした特殊なケースに限られます。
営業所として長期的に使用するユニットハウスは、この特例には当てはまらないと考えておきましょう。
出典:e-Gov法令検索「建築基準法 第85条」(https://laws.e-gov.go.jp/law/325AC0000000201)
2025年4月に施行された建築基準法の改正により、いわゆる「4号特例」の対象が縮小されました。これまでは審査が簡略化されていた小規模な建築物についても、省エネ基準への適合状況などを含め、より厳格な審査が求められるようになっています。
これまでの常識にもとづいて「このくらいの規模なら大丈夫」と判断してしまうと、実際の基準とずれが生じるおそれがあります。たとえば、これまでは提出を省略できていた構造に関する書類や省エネ性能の計算書などが新たに必要になるケースも出てきています。
法改正の内容は専門的でわかりにくいため、計画段階で最新の制度に対応している専門業者に相談しておくと安心です。ユニットハウスの施工実績が豊富な業者であれば、改正後の基準を踏まえたうえで、適切な手続きや設置方法についてアドバイスを受けやすいでしょう。
出典:国土交通省「建築確認・検査の対象となる建築物の規模等の見直し」(https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/build/r4kaisei_kijunhou0001.html)
こちらの記事では、2025年4月施行の建築基準法の改正内容について解説しています。6つの要点やユニットハウス・プレハブの設置への影響も取り上げているため、ぜひあわせてご覧ください。
ユニットハウスに建築確認申請が必要な場合は、書類の準備から検査済証の交付まで、決められた手順に沿って進める必要があります。
ここでは、ユニットハウスの建築確認申請を行う際の流れを、6つのステップに分けて解説します。
建築確認申請には、建築確認申請書や図面など専門的な書類が必要です。
中古ユニットハウスを利用する場合、購入時点で図面が一部欠損しているケースもあり、その場合は改めて図面を作成し直す必要が出てくることもあります。
書類の準備を自分で進めるのは容易ではないため、建築士などの専門家に依頼すれば、こうした書類も含めて正確に準備を進められるでしょう。
出典:e-Gov法令検索「建築士法 第21条」(https://laws.e-gov.go.jp/law/325AC1000000202)
必要書類がそろったら、設置予定地を管轄する自治体の窓口や指定確認検査機関に提出します。提出先や必要書類の内容は自治体によって細かく異なることがあるため、事前に窓口へ確認しておくと手戻りを防げます。
とくに、建築確認申請書のほかに配置図や各種図面、構造に関する書類などを求められることが多く、書類の種類は建物の規模や用途によっても変わります。書類に不備があると審査に時間がかかるため、事前のチェックを丁寧に行うことが大切です。
提出した書類の審査が完了すると、確認済証が交付されます。審査には一定の期間がかかるため、着工を予定している時期から逆算して、余裕をもって申請しておくことをおすすめします。
とくに、申請が集中しやすい時期は通常より審査に時間がかかることもあるため、スケジュールには余裕を持たせておくと安心です。この確認済証を受け取ってはじめて、法律上、工事に着手できる状態になります。
確認済証の交付前に着工してしまうと、建築基準法違反となります。工事を急ぎたい気持ちがあっても、必ず確認済証の交付を待ってから着工しましょう。
工事期間中は、申請時に提出した図面どおりに施工が進んでいるかどうかが重要です。現場と設計内容にずれが生じないよう、施工業者と密に連携を取りながら進めましょう。
とくに、搬入・設置作業は天候や搬入経路の広さにも左右されるため、着工前に現地の状況を確認しておくと安心です。
出典:e-Gov法令検索「建築基準法 第89条」(https://laws.e-gov.go.jp/law/325AC0000000201)
工事の進み具合に応じて、中間検査や完了検査の申請を行います。
検査では、申請時の図面どおりに工事が進められているかどうかが確認されるため、途中で仕様を変更した場合は、あらためて手続きが必要です。
検査に立ち会う機会があれば、指摘事項をその場で確認しておくと、後からの手戻りを防げます。
検査に合格すると、検査済証が交付され、ユニットハウスを正式に使用できるようになります。
ここまでの一連の手続きは、法律や図面作成など複数の専門知識にまたがるため、すべてを自社だけで対応するのは難しいものです。専門家に依頼することで時間の節約にもつながり、確実性も高まります。
費用は大きく、行政手数料と専門家への代行費用に分かれます。
行政手数料は自治体や床面積によって異なり、代行費用は図面作成や現地調査の有無、依頼先の体制によって変わります。
金額を一律に断定するのは難しいため、見積もりを取る際は、どこまでが手数料で、どこからが代行費用かを確認しておきましょう。
出典:東京都都市整備局「建築基準法関係申請・通知手数料」(https://www.toshiseibi.metro.tokyo.lg.jp/kenchiku_kaihatsu/kenchiku_gyosei/gyosei/kijun/tesuryo)
ユニットハウスは便利で比較的スピーディーに設置できることが魅力ですが、建築基準法上、原則として建築確認が必要です。例外的に申請が不要となる条件もありますが、面積や地域指定、既存建物の有無など複数の条件を満たす必要があり、自己判断は禁物です。
とくに、2025年以降は確認審査の内容も変化しているため、最新の基準に対応できる専門家へ早めに相談しましょう。
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